2016年ベスト
順不同。
年末あたりにリリースされたものは聴けていないものが多いので除外されているものもあります。校庭カメラガールツヴァイとか。
Album
少女閣下のインターナショナル - 殺人事件
まがいものとジャンク品が究極なところまで行ってしまい、なんだか崇高なものになってしまった。そんな奇跡のような1枚。
歌唱力の弱さ、決して一般ウケしないであろうルックス、運営の趣味丸出し感といった地下アイドルに付随するマイナス要素がスカムとなって完全にプラスになっている。
少女閣下のインターナショナルとは、ライブでのパフォーマンスである"ぼったくり物販"がTVタックルなどで紹介されてちょっと有名なアイドルシンガーソングライター里咲りさによる自身が社長兼メンバーとなって運営していたグループ。この文面だけでも初見の人はワケが分からないだろうけど、ライヴはもっとスゴい。
このグループといえば誰もが知ってるこの曲のいろいろな意味でヤバいカヴァーが名刺代わりだった。
ライブは結局2回しか見れなかったが、ミックスでジャージャーというときに炊飯ジャーを掲げるヲタクのマンガっぽさや異様に見た目のバランスのとれたメンバーのキャラクターが印象的。完全にスカムだったのでベアーズでのライブは見たかった。
で、本作。
ガレージパンクからへんてこアシッドハウス、B級サントラ、チップチューン~ニューウェーブといった楽曲性と、全体的に漂うSUICIDEっぽさが自分的にツボった。空気感は食パンを投げるメンバーがいた頃のPOLYSICSに近いものを感じる。
ギターと変拍子がやたらカッコいい代表曲。8分もあり、間奏が長いからライブではMCを始めたり早送りで飛ばしたりする。
あらゆる楽曲で起用されるナレーションが新しく感じた。ラップやポエトリーリーディングではなくナレーション。昔のアニメの次回予告やあらすじの説明のようなアレ。サンプリングではなく新たに作られたもので、ここで声優志望だった福円もち(現ライムベリーDJ OMOCHI)の力が発揮されている。
アルバムラスト曲にもあるように活動休止してしまった。ライブアイドル広しといえどもこのジャンク感と異様な完成度はもう現れないのでは。
Andy Stott - Too Many Voices
このアルバムからDJで何曲かかけることが多かった。で、かけたら必ず共演者さんと楽屋でこのアルバムの話になった。面白いのは絶賛と批判で意見が分かれがちなところ。グライムやインディR&Bみたいな流行モノを大喜利的にお題にしてやってみましたって感じな気がする。
シンセの音色がやたらセンチメンタル感を煽りまくっていて、リリース時期よりも夏の終わり、盆明けにかっちりとハマった。「さよなら夏の日」ってロマンティックな感じじゃなくて”日が落ちるのが早くなって寂しいけど暑いのももう飽きた、でもいろいろやり残してる気がするなー、あー鬱陶しい。とりあえずYouTubeでガキ使トーク見よ”って感じの気だるさ。
Beyonce - Lemonade
まさかビヨンセをベストに挙げる日が来るとは。人生って面白いですね。
アメリカエンターテイメントの最高峰の1人と言えるビヨンセさんがフックアップしたのがEDM勢ではなくJames Blake、Jack Whiteといった言わばオルタナサイドの人たちだったというのがもちろん大きい。1人フジロックって感じ。
特に「Hold Up」のルーツレゲエ使いが絶妙なトラックを聴いてDiploてやっぱりスゴいんだなーと再認識。
Apple MusicでもSportifyでも聴けないけど、TSUTAYAで11月末にレンタル解禁されているというちょっとしたエクスクルーシヴ感が面白かったです。
Andrew Weatherall - Consolamentum
今年リリースされたConvenanzaのリミックスアルバム。
ここ最近自分の中でロックっぽいダークなニューディスコ(要はウェザウォールがDJでかけがちな曲調)がきていて、それらをディグったりすることが多かった。そんな中で出会った楽曲のアーティストたちがリミキサーとして一堂に会していたり、ミニマルやダークエレクトロ界隈の自分の好きな人も参加していて驚いたり。ジャンルが微妙に違っても自分の好きなものは実は一貫していたんだなーというちょっとした感動を得られた。
今年は久々の来日が決まって楽しみにしてたけど、体調不良でキャンセルとなった。代替公演はまだ。このキャンセルによってタワレコNU茶屋町で行われたおやすみホログラムのインストアに行ったというのが何かしらの運命だったのだろうかと思ったり思わなかったり。
で、この辺の音をプレイするDJってどこで聴けるのだろうか?レコードは売れているのだから絶対にやっている人はいるんだけど。
ウェザウォールといえば過去のパートナーであるニナ・ウォルシュと共にThe Woodleigh Research Facilityなるユニットでもアルバムをリリース。CD化されずヴァイナルでリリースだった。こちらも素晴らしい。
なるほど、ヴァイナル独特の音質でアナログ機材のみ作った曲を楽しんでくれってことか。と思っていた。
Apple Musicで聴けた。
David Bowie - Backstar
全体に漂うダークでゴスい雰囲気がいいなーとか思ってたらアルバムを作る時にDeath Gripを聴いていたという話を読んでビックリ。大御所なのに最先端を見ていた感性に賞賛。過去にマゾンナのライブを見るために小さなライブハウスの列に並んでいたという話はマジかもしれない。
ベスト盤に収録された楽曲「Sue」の再録版がとにかく素晴らしい。今まで度々メタル化するだけで失敗に終わっていったロックとドラムンベースの融合がマーク・ジュリアナの手腕によって見事に成功しているように思う。
David Bowie - Sue (Or In a Season of Crime) [Audio]
そんなマーク・ジュリアナの新バンドHalo Orbitもヤバい。Buffalo Daughterのシュガー吉永さんとMars Voltaのベーシストであるホアン・アルデレッテによるもの。New Chapter Jazzに紹介されているような新世代ジャズ勢がロックと関わりだしているのはかなりアツイ。
デヴィッドボウイは伝説以上に今まさに最もカッコいいロックをやっている人ということが素晴らしかった。まだ作品を作るつもりだったらしい。フォーエバーヤングを身を以て表現したような人だった。
Satanic Porno Cultshop - Boneless ep
大阪、というか日本、むしろ世界が注目するトラックメイカー集団の作品。
TR-808などJuke/Footworkの定番ツールを使わずに新たな境地を拓いた作品を今年だけでもたくさんリリース。その中でもロックやガレージパンクを使ったこの作品がツボりました。
自分はしっかりと踊れないくせにアイドルヲタのお客さんにフットワークを啓蒙することを目標にしている節がある。先日UNDERHAIRZがまさにJukeを取り入れた楽曲を発表したのだが、その際にハバナイダンスと称されたのがなかなかに印象的だった。
Masayoshi Fujita & Jan Jelinek - Schaum
今年のトレンドの要素の中に"アンビエント"と"トロピカル"があったように思う。
ヴェイパーウェーブ界隈なんかでもそうだったらしいし、レコード屋で売っているカセットテープはそういう作風が多かったり、やけのはらがUNKNOWN MEなるアンビエントグループを結成したり。
トロピカルはまさにトロピカルハウスもそうだが、先述のダークなニューディスコでロックな曲調が多かったRed Axesがまさにトロピカルっぽくなっていたり。去年だけどClap!Clap!もまさにそうだった。
そんな二つのトレンドが合わさったようなアルバム。混沌としつつもパーカッションやおもちゃの音が有機的に絡み合ってぼーっと聴いているうちに終わってしまう。
The Body – No One Deserves Happiness
メタルにしてもヒップホップにしても純度の高いものは昔からあまり受け付けにくい。それはミクスチャー文化が主流だったオルタナティヴロック世代というのが大きいのかもしれない。基本的に好んで聴くものが混血なモノなので、CANならflow motion、ブランキーならロメオの心臓みたいに異色作と言われるものが自分の中での主流だったりする。
The Bodyはスラッジ~ドゥームメタルのデュオだがエレクトロニクスの導入がインダストリアルミニマルと共鳴した「I SHALL DIE」に象徴されるように様式美にとらわれない先鋭的な発展を見せている。今作はその路線をさらに進めたように女性シンガーの参加やとにかくポップな内容。要は異色作。
vampilliaとの共演や共作も納得。The Bodyのメンバーはアイドル好きらしく、vampillia出演の「いいにおいのする映画」に主演した金子理江擁するLADYBABYをチェックしていたというのはなんともいい話。
Kralliceが最先端の音楽を紹介するAdult Swim Singlesでリリースされていた。ポストブラックメタルは今後さらにムーブメントが広がるのかも。
VMO - Catastrophic Anonymous
個人的に今年はVMOの一年だった。vampillia blackest ever blackがVMOに名前を変え、イベント「いいにおいのする〜」は回数を減らしマンスリーイベント「世紀末」が始まる。狂乱のライブを経て生まれた、とにかく待望だった1枚。
ライブの凄まじさが先行して話題になっているけど音源も間違いなし。音源で聴くことでvampillia同様のロマンチズムをさらに感じやすくなった。
いろんなライヴ映像があがっているけど、手前味噌ですが自分が撮った動画が↓です。俯瞰しつつ臨場感を伝えたかったのであえてモッシュに巻き込まれてズッコケるところまで収録されてます。
ブラックメタルの再解釈としてダンスミュージックを選んだという考え方は、現在のモード界において大きな存在となっているVETEMENTSに共振していると思っている。もしVETEMENTSを流行りとしてではなく、そのセンスに惚れ込んでいる人にはVMOをぜひ注目して欲しいです。
ちなみにBiSの新しいパーカーが4XLまであるのはVETEMENTSパロディだと思います。
Danny Brown - Atrocity Exhibition
デトロイトのラッパーによる今年作。Trapではなくレフトフィールドなトラック、やたらキャッチー。コレはスゴいと思ったらWarpからリリースされるということで納得。多分ヒップホップを聴かない層の方が反応するのでは。
とにかく今年はラップの年だった。CMもとりあえずラップさせときゃいいだろうみたいなのが垂れ流されたのを見て、一部の界隈だけのブームではないことは確かだった。フリースタイルダンジョンはYoutubeに流されなくなった途端にTL上で話題を見なくなったが。
MCバトルを生で見てわかったが、あの手のMCは何を言ってるかがわからないと評価しにくい。自分が普段聴くようなラップものは何を言ってるかわからない方がむしろ聴きやすい。
Track
思いついたやつだけ。
John Gastro - Local Distance2016
都会と地方、自分の身で言えば東京と大阪。この隔たりについて思うことが多々あった一年でもあった。 大森靖子の「アンダーグラウンドは東京にしかない」がすべてを言い当ててしまったような事を。
tofubeatsとokadadaによる共作が原曲で、地方におけるトラックメイカーのスタンスとインターネットが結ぶものについて描いたものだった。
この曲にはあらゆるカバーやRemixがあるが、これも地方と東京の距離感を描いている。そして地方におけるモールやチェーン店による街の均一化に触れつつ、インターネットの発展による人々の個性の均一化について触れることで韻を踏んで前進させているように感じる。
Local Distance はこれからもジャンルを超えた人たちにカヴァーされていって欲しい。様々な視点と地点で描かれる事で、東京すら地方になり得る物語が見られるかもしれない。
"音楽くらいしか楽しいことないのにね"
ほんとそれなんだよ。
Bogdan Dražić - Cyrk 1
例のダークなニューディスコを探している過程で見つけた。ホラー映画のサントラやそれっぽいハウスをリリースするイタリアのレーベル Giallo Discoからの今年作。
この手のイナたい雰囲気は昔からツボなのでよく聴いた。けど、これといってかけるタイミングがない。
JARu - Angry Bassline
Juke/Footworkを聴き始めたきっかけはvampilliaのマイク・パラディナスによるリミックスで、それに合うような音を求めているうちにゴスっぽさを感じるダークなものを好むようになる。イベントに合うし。
今のところ女性のみがリリースしているUKはブライトンのObjects Limitedなるレーベルからの音源。
大森靖子 _ 愛してる.com
「君のオススメに面白いものはひとつもなかった それでもついていきたいと思った たのしい日曜日」ってめちゃくちゃリアルじゃないですか?
Maison book girl - Karma
ブクガはファンということもあり全部好きなんだけど、この曲は最初聴いた時に頭のCPUが追いつかないというか困惑した。何かっぽいようでどれでもない。
カナダのライヴで自然とモッシュが起こったという話が出てからなのかそれ以前からなのか、界隈のヲタがVMOのライヴばりに大暴れするのが面白い。キックが抜けた時に異世界の祭りに気づけばいたようなイビツなノスタルジー感じに押井守を感じた。
Blood Orange - Augustine
Blood OrangeとLight Speed Championが同一人物って知りませんでした。
校庭カメラガールツヴァイ - Lil Tomte
まさかのPrimal Scream〜Two Lone Swordsmen直系ダークエレクトロパンク。
時間がないのでこの辺で
Live
世紀末とかハバナイとかJlinとか当たり前によかったのはあえてはずして紹介したいのはこの2つ。
UNDERHAIRZ vs OSSAN @Socore Factory
アンダーヘアーズのワンマンではなくVS Ossan。
ヒップホップにおけるレペゼンというものを身の回りのオッサンを紹介する事によって成立させた。
UNDERHAIRZ2017年ボカーンと売れそう。
淡路島ガールズポップフェスティバルの2日目
「ライブはみんなで作るもの」とはよく聞くフレーズが、ここまで客に委ねられるフェスはそうないしあるべきでもない。このフェスがどれだけ問題があったかは上記のようなまとめを見ていただきたい。
とにかく最後の椎名ぴかりん→清竜人→Maison book girlの流れが素晴らしすぎて心の底から感動した。ライブアイドルシーンに顕著な自ずと主体性を持とうとする客の意志が爆発しすぎて、自分たちがこのフェスを成功させようとするヤケクソさ。それに呼応する演者、特に清竜人の「ワシはこういうのを待っとったんじゃ!!」と叫んでからの暴走はもはや放送事故の番組の中にいるような興奮で全員おかしくなっていた。
この次の週に行ったタイコクラブはとても快適でした。でも、何かが足りないと思ってしまったのは淡路島ロスなのかもしれません。
早川義夫さんが言ってました。「足りないのではなく、何かが多いのだ」と。